おとのほそみち

行きかふ歌も又旅人也



Stone Stone Stone / 大友良英スペシャルビッグバンド (2022)

 

異能のギタリスト大友良英率いるビッグバンドの快作

2013年に、NHKの連続テレビ小説『あまちゃん』の音楽を担当し一躍知名度を高めた大友良英。

そもそもはノイズミュージックやフリー・ジャズのギタリストだが、非常に活動の幅の広い異能のミュージシャンで、映画音楽、テレビドラマの劇伴などの作曲も数多く手がけ、地域振興を目的とした音楽イベントやプロジェクトにも数多く参加している。

本作は、スペシャルビッグバンドとしては、6年半ぶりのフルアルバム。

このバンドは、一般的なジャズのビッグバンドとは異なり、アコーディオンやサインウェーブなども含めたやや異色な編成。
ベースがSuper Junky Monkeyのかわいしのぶという人選もユニークだ。

サウンドも王道のジャズではなく、ロックやファンク、民謡、音頭まで、さまざまな要素が渾然一体となっている。

しかし不思議とごちゃまぜ感は薄く、いわば日本の伝統的な祭りのような、一体的な祝祭感のある音空間を作り上げている。

とにかくアイデアが豊富で、何度聞いても新しい発見がある。

なかでも印象的なのはザ・フォーク・クルセダーズの名曲をカヴァーした「2.悲しくてやりきれない」。

大編成での情感豊かな演奏に心を奪われ、途中、フリーキーなソロが雄叫びのように割って入ってくるのだが、それが決して耳障りではなく、何故かさらに哀愁をそそるのだ。

こうしたビッグバンドを維持するのは、マネジメントの面で相当たいへんだと思うが、こんなことをやるのは大友氏しかいないので、ぜひコンスタントに活動を続けてほしいと思う。

この動画は2017年のライブで今回リリースされた演奏とは異なるが、このバンドならではのユニークネスがよくわかる。

1.Stone Stone Stone
2.悲しくてやりきれない Kanashikute Yarikirenai
3.Music for Kinue Hitomi
4.孤独の歳月 Annees de solitude
5.Song for Che ~ Reducing Agent
6.GINGA
7.Music for Taiji Tonoyama
8.Gallophy
9.Hong Kong Hong Kong Hong Kong

 

大友良英(G, Turntable, Banjo) / 江藤直子(Piano, Horn Arrangement) / 近藤達郎(Organ) / 齋藤寛(Flute) / 井上梨江(Clarinet) / 鈴木広志(Sax, Horn Arrangement) / 江川良子(Sax) / 東涼太 (Sax) / 佐藤秀徳(Tr) / 今込治(Trombone) / 木村仁哉(Tuba) / 大口俊輔(Accordion) / かわいしのぶ(B) / 小林武文(D) / イトケン(D) / 上原なな江(Marimba, Per) / 相川瞳(Per) / Sachiko M(Sine Waves)

ゲストメンバー
Chris Pitsiokos(Alto Sax) / Rully Shabara(Voice) / Wukir Suryadi(Self-buit Instruments) / 類家心平(Tr) / 吉田野乃子(Alto Sax) / Yuen Cheewai(Electronics, Gamelan, G) / Yan Jun(Voice) / Ryu Hankil(electronics) / dj sniff(field recording in Hong Kong 29 sept 2014) / Kahimi Karie and Niki(Voice & Happiness)

<了>

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