おとのほそみち

行きかふ歌も又旅人也



【JAZZ新譜】ラボでのヒーリング研究の成果をここに Songwrights Apothecary Lab / Esperanza (2021)

ソングライツ・アポセカリー・ラボ / エスペランサ

 

第62回グラミー賞「最優秀ジャズ・ヴォーカル・アルバム」受賞の前作『12リトル・スペルズ』から約2年を経ての、待望の新作。

その内容はというと、究極のヒーリングミュージック。

音が優しくて心地よく癒やされる、という聞き心地だけの話ではない。

神経科学やセラピーなどの専門的な研究者との共同によって作られた、いわば研究の成果としての作品なのだ。

前作『12リトル・スペルズ』からヒーリングと音楽のあり方を追求してきたエスペランサだが、今回はさらに踏み込んだ。

彼女自身の研究室「ソングライツ・アポセカリー・ラボ」に所属する、生徒、ミュージシャン、専門家らの知見を活かした制作されたという。

そうした経緯もあって、この研究室の名称が、そのままアルバムタイトルになっている。

ラボでの研究の成果というと小難しい感じだが、そもそもの目的がヒーリングなのだから、しっとりした曲が多く、全体としては耳馴染みはいい。

エスペランサの作品の常として、メロディの動きはいささか変則的で、すぐに口ずさめるような類のものでもないが、そのメロディが生む浮遊感が、ヒーリングにつながっているような印象もある。

彼女はこれまで、何度も音楽的な(ビジュアルもだが)スタイルを変えてきた。

次作もヒーリング路線なのか、別のレイヤーにいくのか、目が離せない。

 


<了>

 

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