おとのほそみち

行きかふ歌も又旅人也



山下達郎サンデーソングブック2025年5月18日『「メロディーズ」アナログ盤・カセットテープ再発記念』

番組中の曲紹介のコメントを要約して記載しています。

1. 悲しみのJODY / 山下達郎 
2. 高気圧ガール / 山下達郎 
3. 夜翔(NIGHT-FLY) / 山下達郎 
4. GUESS I'M DUMB / 山下達郎 
5. ひととき / 山下達郎 
6. メリー・ゴー・ラウンド / 山下達郎 
7. BLUE MIDNIGHT / 山下達郎 
8. あしおと / 山下達郎 
9. 黙想 / 山下達郎 
10. クリスマス・イブ / 山下達郎 

 

私、1983年にムーンレコードというインディレベルを設立いたしまして、それまでの会社から移りました。
ちょうど30歳の時です。
で、新しいレーベルで出しましたファーストアルバムが「メロディーズ」。
もう、サンソンのリスナーの方、昔からお聴きいただいているリスナーの方は、たくさん聴いていただいていると思いますが。

先日シュガーベイブの「SONGS」をリリースしまして。
「SONGS」は、もう20周年、30周年、40周年、そして今年の50周年で何回もリリースしておりまして、昔からのリスナーの人で、またかよとおっしゃるかもしれませんけども、「初めてSONGSを聴きました」という方に、たくさんお便りをいただきます。

ですので、本当に10年おきくらいに、一生懸命やらないとダメかなと。
そういうわけで、「メロディーズ」も、なぜかアナログ盤とカセットという、CDは30周年記念盤でもう綿密にやりましたので、アナログ盤。
アナログ盤も、先ほど申し上げましたみたいに、1回「メロディーズ」のアナログ盤再発した時は2枚組でですね、音質重視で片面で2曲もしくは3曲でやったんですけれど、最近はそれよりもオリジナルスタイルの方がいいという方がとっても多いので、オリジナルスタイルでリイシューするという、不思議な時代になってきました。

本当にありがたいことです。
2025年、42年ぶりに、オリジナル仕様のアナログLP、そしてカセットが再発でございます。
アルバムの話は、いろいろとさせていただくとしまして、
A面の1曲目、A面という言葉をまた使う日が来るという、A面の1曲目「悲しみのジョディ」
悲しみのJODY / 山下達郎

 

先ほども申し上げましたように、10年に1度ぐらいアニバーサリー盤でやっておりまして、繰り返しております。
もうデビュー50周年を迎えまして、何回も何回も同じことを喋ってて、なんかもう飽きられてるのかなとか思いましたら、先日の「SONGS」でプロモーションをやっておりましたら、まだ初めてお聴きになる方がいらっしゃる、そういうようなものに驚きました。
やっぱ、これ繰り返してやっていかなきゃなんない。
なんか落語家になった気分になりました。
ですので、「メロディーズ」、今週水曜日にアナログ盤とカセットが再発になりますので、また昔の出た時のように、そんなに詳しくはないですけど、できるだけ解説させていただきたいと思います。

 

1975年に、シュガーベイブでデビューしまして、76年にソロになりまして、6年間、RCAというレーベルで活動しました。
1982年に「FOR YOU」というアルバムを出した後に、ムーンレコードというところに移籍するんですけども。
1980年に「ライド・オン・タイム」というヒットが出てから、2年間はですね、いわゆるリゾートミュージックというか、アウトドアミュージックの代表格みたいに言われまして。
「夏だ!海だ!達郎だ!」という、そういうコピーがありまして、インタビュー受けるたびに、「山下さんって言うと、やっぱり夏っていう感じですよね」。
初めは「そうですね」って言ってたけど、だんだんだんだん、なんか大丈夫かなっていう。
それがちょうど30手前のところなので。

当時は、30歳過ぎると、やっぱりこうした音楽のミュージシャンはですね、下り坂へ向かっていくという、ピークを超えて、そういう時代でありましたので、このまま「夏だ!海だ!達郎だ!」って繰り返していくの、嫌だなって急に思い始めまして。
それは、シュガーベイブの時代に別にそういうものを目指してたんじゃないので。
時代が、音楽をアウトドアに持っていくという、ウォークマンとかカーステレオとかそういうものの発展とともに、そういうニーズに合った音楽が求められたという。
ちょうど私がそれにハマったという。
そういうようなことがあって、そうじゃない原点に少し戻りたいなという、そういう思いが込めて作られたのが、この「メロディーズ」というアルバムであります。

 

なので、このA面1曲目の「悲しみのJODY」というのは、まさにそういう1曲でありまして、夏の終わりの歌であります。
こういう音を作って、こういう歌を歌う人間は1人もいませんでした。
今でもほとんどいませんけれど。
ドラムからベースから全部1人で多重録音で作っておりまして、明らかにピーチボーイズのサウンドを目指したものであります。

いわゆる8ビートのロックンロールなんですけども、この時代は、こうした8ビートのロックンロールよりも、もうちょっとフュージョン、ジャズ、16ビート。
今で言うと、R&Bってやつですね。
そうしたダンサブルな音楽の方が音楽的にはちょっと高級だという、そういう時代だったんですけども、自分としてはそんなこと全然なくて、やっぱり8ビートをやりたいなという、そういうような思い。
いろいろ思いがこもったA面の1曲目のこの「悲しみのJODY」
それからB面のラストの「クリスマス・イブ」。
ここに象徴的に入っております。

 

でも、シングルはやっぱり夏っぽい曲じゃないとダメな時代だったので。
全日空のキャンペーンソングでシングルを出しました。
これが2曲目に入っております。おなじみの「高気圧ガール」。 
30歳ですから、まだ若い。
この1曲目、2曲目を聴いていただきますと、ラブソングなんですけども、登場する女の人は具体性が全然ないんです。
「高気圧ガール」なんて「高気圧」を女の人にしたという、そういう擬人的な歌なんです。
私の歌はそういうものばっかりなんですけど、そういう抽象的なものが好きなんです
高気圧ガール / 山下達郎

 


昔からラテン音楽が好きで、あまりそういうことを具体的にお話したことないんですけど、ブラスバンドをずっとやってたので、ブラスバンドはラテン音楽をたくさんやりますので、そういうところで学んだと。
それから、20歳ぐらいの時に聴いたカリプソミュージックとか、マイティ・スパロウとか、そういうようなもの。それから、ブラジルの音楽。
それほど深く入ったわけじゃないですけど、むしろ僕、パーカッションなので、ドラムのパターンとか、そういうものにものすごく興味があって、曲とかじゃなくて。

で、この時代になりますと、アース・ウィンド&ファイアーとか、そういうブラジル音楽、ラテンミュージック、それがサルサですね。ニューヨークの、そういうようなものに影響を受けた方が、怒涛のように出てきまして。
そうすると、若い頃に聴いたペレス・プラードとか、そういう記憶が蘇ってきました。

そうした、いわゆるポリリズムと言いますけれども、複数のパーカッションで生み出すリズムのパターンというものにものすごく興味が出てきて、「高気圧ガール」、この曲なんか、その典型であります。
そういう具合に曲を作ってた時代です。
それで、ここから数年後。コンピューターミュージックが出てくるので、それがパーカッショニストとかいらなくて、マシンでそれが構築できるような時代になります。
そういうのにまたハマっていくという。

とにかくリズム&ブルースが若いころから10代のころから好きだったので。
特にシカゴのリズム&ブルースが好きでカーティス・メイフィールドとかジェリー・バトラー、そういうようなものがものすごく好きだったので。
そういうものに影響されたサウンドというのをこの時代は結構やっておりました。
3曲目に入っております。
これなんかも、その典型であります。
当時は今みたいに、裏声を使って歌う男性シンガーが、そんなにいなかったんです。割と珍しいパターンで。
特にライブへ行くと、当時は私、30歳ぐらいですから、ツアーをやってると、中学出たぐらいの男の子が一番前で、私がこういうやつを裏声で歌うと、「何やってんのかな」って顔で見られたという、そういう記憶があります。
これはかなり、いわゆるシカゴのソウル、70年代、80年代のシカゴのソウルの空気感が出ていると思います。
ウォルター・ジャクソンとか、そんな感じが。ウォルター・ジャクソンはバリトンの人ですけど。
夜翔(NIGHT-FLY) / 山下達郎

 

この頃はカバーが好きで、このアルバムにも1曲入っております。
選んだやつが、「Guess I’m Dumb 」という。
今もそうですけど、レコードを一生懸命買っておりまして、なかなか手に入らないやつというのがありましてですね。
ついに手に入れて、手に入れた後は、それをカバーしたくなるという。
「Guess I’m Dumb 」というこの曲はブライアン・ウィルソンの書いた曲で、グレン・キャンベルに書き下ろした曲であります。

グレン・キャンベルは、一時期ビーチボーイズのメンバーとして助っ人でやっていたために、ブライアン・ウィルソンは、それのお礼で書いた曲ですけれども。
でも、シングルで出してヒットはしませんでしたけれども、コレクターの間ではすごくレアなシングルで、今はCDで全然聴けますけど、あの当時はシングルを一生懸命探してオークションをやったりして、手に入れたものでございます。
手に入れたらカバーしたくなる「Guess I’m Dumb」
私の他にもフランス人のルイ・フィリップという人がカバーしておりますので、同時期ですが変な曲であります。
これも「悲しみのJODY」と同じで、一人でドラム、ベース、全部やったやつに、ストリングスとブラスが入っているという、不思議な感じであります。
GUESS I'M DUMB / 山下達郎


この頃は、いわゆるアナログLPで全てのカタログが発売されていた時代で、まだCDがなかったとかCDが開発されたばかりの時代で、私にとってこの「メロディーズ」が、最初のCDが発売されたものなんですが。
でもアナログがまた主だったので、大体A面B面合わせて40分前後、10曲とか8曲とか、長いやつだと6曲とか。
いずれにしても、両面で40分前後という、なんか人間の集中力がキープする最善の時間だと言われている、そのぐらいですので、今聴きますと、あっという間に終わってしまう。
A面が、次の曲で終わりであります。
「ひととき」という一曲で、なんかフォークシンガーが歌うような曲に作ろうと思ったんですけども、作ってみますと、そういう感じはならないという。
割と隠れた人気曲という感じで、難波 弘之と伊藤広規と3人でやる時は、今でも時々やっております。
アルバム「メロディーズ」A面の5曲目、最後の曲、「ひととき」
ひととき / 山下達郎

 

で、アルバム「メロディーズ」B面に入ります。
昨年のツアーで演奏しました「メリー・ゴー・ラウンド」。
この「メロディーズ」というアルバムは、いろいろな特徴があるんですけれど、ほぼ全曲を自分の作詞作曲でやりました初めてのアルバムです。
いろいろと思うところがありまして、自分で詩を書く作業を始めたいと思って、30を境にそういう方向で行って、今に続きます。
ですので、この「メリー・ゴー・ラウンド」というのも、いわゆるファンクチューンなんですけれども、自分で書いた詩をつけますと、不思議な雰囲気になりました。
昔からレイ・ブラッドベリが好きだったので、そうした空気を入れたいなと思って書きました。
先ほどの「夜翔」というような曲はシカゴソウルですが、これはアイズリーブラザーズの、かなり影響を受けて作った曲です。

こういうタイプの曲は、ドラムとベースと私キーボードで3人でまずレコーディングして、それにギターとかパーカッションと、あと最終的にそれにメロディーをつけるという事ですね。
先にコード進行とかを作っておいて、それに合うメロディーを後ではめていくという。
前作の「FOR YOU」なんかも「SPARKLE」なんかも、同じ作り方ですけど。
どうしても家でピアノで弾き語りで作ると、そのリズムパターンというものに、後でアレンジした時に、メロディのビート感に制約が出るので、逆にトラックを先に作って、それに合うメロディーを構築した方が、なんていうのかな、メロディーがスムーズにのるという。
そういうようなことで、ずっと今でも基本的にそうやって作っています。
メリー・ゴー・ラウンド / 山下達郎

 

B面の2曲目が「Blue Midnight」。
今回のアルバムの中でこの曲だけ自分の詩ではありません。
前作「For You」のアルバムの時にレコーディングされたストックですけれど、1回ミックスしたんですけども、ストリングが欲しくなって入れ直したという。
それでこのアルバムに収録しました。
これはいわゆるフィラデルフィアサウンド狙いの一曲で、これも裏声で歌ってます。
この頃裏声好きだったんですね(笑)。
BLUE MIDNIGHT / 山下達郎


この時代は、私のアルバムは、ドラムが青山純で、ベースが伊藤広規、それから私のギターで、キーボードが基本的には、自分がキーボードを弾く曲もありますけども、大半は難波弘之さん、佐藤博さん。この2人がメインあります。
A面の3曲目の「ナイトフライ 夜翔」、それからこの「Blue Midnight」は佐藤博さんのキーボードで、もうこういう曲になると佐藤君の独壇場というか。
お次3曲目もですね、やはり青山・伊藤・私の3人レコーディングに、難波君のハモンドオルガンを足して、ギターを足していった曲であります。
これも割と昔から人気の曲であります。
典型的なシカゴソウルのリズムパターン。
あしおと / 山下達郎


てなわけで、まさか「メロディーズ」、42年経って全曲解説するとは思いもよりませんでしたけど、まあ、それも本当にありがたいことでございます。
30周年記念盤でCD出したときは、これで最後だろうなと思ってたんですけど。
まさかアナログ再発!カセット!ありがたい。
CDの方がボーナストラック入っておりますのでですね、こちらもよろしく一つ。

アルバム「メロディーズ」B面4、5と繋がっております。
4曲目は、弾き語りで「黙想」というタイトルであります。
で、ラストの「クリスマスイブ」に続けるという。
その前にワンクッション欲しかったので、弾き語り一発録り。
それで「クリスマスイブ」につながります。

おかげさまで「クリスマスイブ」、昨年で連続チャートイン39年という。
今年入りますと、40周年です。ありがたいことでございます。
もう「クリスマスイブ」語り尽くしてるんで、もう何も申し上げることありませんけども。
なんでそんなに長い間で聴かれ続けてきたか、ということをよく取材で聴かれてきましたけれど、そんなことはわかりません。
リスナーの皆さんのご支援のたまものです。
ただ一つだけ言えることはですね。
これ、なんかクリスマスソングを作ろうとか、クリスマスソングで一発シングルヒットで、ヒットを出そうとか、そういうことが一切ないんです。
クリスマスの、こうした信仰の、あのクリスチャンの曲を書いたので、ちょっとバロック調にしようと思った時に、パッと閃いたのが「クリスマスソング」というアイデアだったので。
そうした意味で、あざとさというか、そういうものがなかったのが良かったのかな、とか、そういうようなことを思っております。
もう出して42年経ちますが、引き続きよろしくお願い申し上げます。

アナログLPどれくらい聴かれるのかと思うんですけどもありがたいことです。
よろしくお願いします。
アルバム「メロディーズ特集」、ご清聴ありがとうございました。
B面のラスト「黙想」に続いて「クリスマスイブ」、お時間まで。
黙想 / 山下達郎 
クリスマス・イブ / 山下達郎

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