おとのほそみち

行きかふ歌も又旅人也



山下達郎サンデーソングブック 2022年06月12日「ニューアルバム『SOFTLY』特集 PART 1」

番組中の曲の解説部分を要約して記しています。 ネットに音源があるものは張っていますが、オンエアされたものとはヴァージョン等が異なる場合があります。


1. フェニックス / 山下達郎 
2. LOVE'S ON FIRE / 山下達郎 
3. ミライのテーマ / 山下達郎 
4. RECIPE / 山下達郎 
5. CHEER UP! THE SUMMER / 山下達郎
6. 人力飛行機 / 山下達郎 "ソフトリー
7. うたのきしゃ / 山下達郎 
8. パレード (ACOUSTIC LIVE) / 山下達郎 

 

2021年、NHKのSDGsキャンペーンのための曲書きの依頼があった。
2003年にNHKの環境番組のために主題歌を書いていて内容が同じなので、その曲を使ってくれるよう打診。
2003年なので、ちょっと音が古いので、いっそのことアカペラに仕立てることにした。
でも曲が長くフル・ヴァージョンはキツいので、スッキリと60秒にまとめることにした。
この曲をアルバムに入れるか入れないか、どこに入れるのかにすごく迷って、結局、頭に持ってきた。
フェニックス / 山下達郎 

 

『SOFTLY』の2曲目でアルバムのリード曲。
時代ごとにいろいろなスタイルの音楽が語られるが、音楽的に分析すると要素という意味ではそんなに変わらない。
アレンジとか楽器で変わり、アナログからデジタルになったり、ドラムからマシーンになったり、サンプリングになったり、そういうものでテイストが変わるけれど、作り方はそんなに変わらない。
そういう編曲的なファクターに昔から興味があっシンガー・ソングライターというよりは作家的な願望が強い。
最近のグローバル・トップ40とか聴いてると、ある種の傾向が見られる。
その仲間に入れてという感じで作ってみた。
昔からの作風とうまくコンバインして、舐めるようにくっけてみた。そういうトライの一曲。
LOVE'S ON FIRE / 山下達郎 


2018年の細田守監督の『未来のミライ』のオープニング・テーマ。
細田監督の作品は自分の生活を反映したものが多く、『未来のミライ』は子育ての奮戦から発想された。
この曲も新しい命が生まれる感慨を父親の側から観察した歌を作ろうとした。
山下達郎版「こんにちは赤ちゃん」。
今回のアルバムは既発のシングル曲をミックスし直していて、聴感はほとんど変わらないのだけれどオーディオ的に揃えている。
「ミライのテーマ」をこういうミックスの感じでやると、ちょっとシュガーベイブぽくなる。
ミライのテーマ / 山下達郎 

 

最新シングルで2019年の「RECIPE」。木村拓哉さん主演のドラマ『グランメゾン東京』の主題歌。
フレンチの食材とか調理法、素材をずらっと並べて仕立てたラヴ・ソングで、曲を書いたときに木村拓哉さんが「全部で何種目あります?」と言ったのをよく覚えている。
RECIPE / 山下達郎 


5曲めは2016年のフジテレビのドラマ、『営業部長 吉良奈津子』の主題歌。
主演の松嶋菜々子さんのデビュー作のNHK朝ドラ『ひまわり』は現在再放送中で、主題歌は私の「ドリーミング・ガール」。
「CHEER UP! THE SUMMER」ミックスをし直したら、なんとなくシュガーベイブ的な感じが出てきた。
おじさんになってもまだまだ夏は終わらないという、そういうおじさんの応援歌。
CHEER UP! THE SUMMER / 山下達郎

 

ちょっとだけ落ち着いてるのが、純粋な新曲の「人力飛行機」。
この曲で一緒にレコーディングした、シュガーベイブのメンバーだったドラムの上原裕さんとやるのは、1998年のアルバム『COZY』の「ドーナツ・ソング」以来、25年ぶり。
ドラムが上原裕さんで、ベースが伊藤広規さん、キーボードが難波弘之さんで、アルバム『GO AHEAD!』の頃のマターに戻って、まるで『GO AHEAD!』の頃の音になっている。
「人力飛行機」というタイトルは一種のメタファー。
自分の若い頃の記憶を辿って、まだ何もはじまってないとき、何になりたいとか漠然とした夢があった。
今はデジタル化、AI化などなかなか難しい時代になり、そうした時代にアナログ回帰というようなスピリットで、どうやって生きていくか、一種の若者応援歌。自分が若かった頃の記憶を呼び戻して作った一曲。
若い頃に夢を持つことは重要で、「夢は必ず叶う」という歌はたくさんあるが、実は叶わないことの方が多い。
夢を叶える努力は必要だけれど、叶わなかったときにどうするかという教育が日本の場合ない。
挫折したときにどうメンテナンスするか、これから先の若い人たちのために、そういうようなことを大人は考えなきゃいけないんじゃないか。
その結果、夢を持つことにシニカルになる発想もありうるが、ある程度の目標とか、いい意味での上昇志向は若い人は特に必要なんで、そういうバランスを考えつつ作った曲。
人力飛行機 / 山下達郎 

 

2018年、細田守監督の『未来のミライ』のエンディング・テーマ。
ちっちゃな男の子がいろいろと思い悩むのを、大人がよしよしするような歌。
チャック・ブラウンに代表されるゴー・ゴー・ビートというワシントンD.C.のビートでやっている。
うたのきしゃ / 山下達郎 

 

初回盤のみボーナス・ディスクが付いていて、2021年12月3日にTOKYO FMホールで行われたサンデーソングブック1500回記念アコースティック・ライヴの音源を7曲収録している。その中の1曲。
作ってから、もう48年も経った。
パレード (ACOUSTIC LIVE) / 山下達郎 

 

<了>