おとのほそみち

行きかふ歌も又旅人也



山下達郎サンデーソングブック 2020年1月19日「ねずみで棚からひとつかみ」書き起こし

 

達郎氏による曲の解説部分を書き起こしています。インフォメーションやリスナーからのメッセージは割愛しています。 ネットに音源があるものは張り付けていますが、オンエアされた音源とは異なる場合が多々あります。

 

1. いのちの歌 / 竹内まりや'14
2. MICKEY MOUSE / JIMMY SMITH '67
3. RAT RACE / THE DRIFTERS '63
4. RAT RACE / IMPELLITTERI '96
5. MUSKRAT LOVE / CAPTAIN & TENNILLE '76
6. MICKEY MOUSE MARCH / JULIE LONDON '67
7. どぶねずみ / サンハウス '76
8. SHAKE THAT RAT / NICK LOWE '76
9. BEN / MICHAEL JACKSON '72

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今年はねずみ年でありますので「ねずみで棚からひとつかみ」
「鳥で」「犬で」とか干支でやりましたが。
昨年はイノシシだったので、あんまりネタがありませんでしたけども、ねずみだと楽勝かなと、始めましたけどもですね。これが、意外となかなかたいへんでありまして(笑)
でも、がんばって選曲してみました。
なかなか面白いセットリストだと思います。お楽しみいただければと思います。

ところで年末。紅白歌合戦に竹内まりやさん出演して「いのちの歌」を歌いましたけれども、それのおかげで、なんと「いのちの歌」がですね、再発されましたCDシングルが、オリコン1位とらして頂きまして。
ま、間隙縫ってなんですけど。
でも、ほんとにお聴きいただける方、いらっしゃなければオリコン1位とれませんので。
2012年以来、8年近くぶりでございます。
ありがとうございます。
なので、あたまはこの曲。

いのちの歌 / 竹内まりや

 

 

MICKEY MOUSE / JIMMY SMITH
洋邦いろいろ調べたんですけど邦楽はなかなかいいのがないです。ほとんど洋楽になります。
ねずみというとMOUSEです。でMOUSEの歌もあまりないです。
MOUSEといえばアメリカ文化の中ではなんといってもミッキーマウス。
我々はテレビで、ディズニーランドのシリーズで見ております「ミッキーマウス・マーチ」
あれがおなじみです。今はどうなんでしょう。ディズニーランド行くとかかるんですかね。
「ミッキーマウス・マーチ」をやってる人はたくさんいるんですけど、ジャズ・フィールドからジミー・スミス。ハモンド・オルガンの名手です。
1967年にこれをシングル・カットしてます。珍しいことに歌を歌っている。インストじゃない。
プロデュースド・バイ・クリード・テーラー。

 
英語圏だとねずみはMOUSEのほかにRATがあります。
学校で教わりましたけど、マウスは割ときれいでかわいいペットのねずみで、ラットは汚い、下水道にいる割とダーティーなイメージ。これがMOUSEとRATの比較だと。
そんなようなことから、アメリカの音楽ですと「RAT RACE」、出世競争という意味ですけど、富とか権力をめぐる激しい競争に巻き込まれる生活様式、とアメリカの辞書には書いてありましたけど。
「RAT RACE」という歌はけっこうありまして、そのなかの1曲。
ザ・ドリフターズの1963年の全米71位。
珍しいことに全米チャートに入ってますが、R&Bチャートにはチャートインしていない。
曲を作ったのはもちろんリーバー&ストーラー。それにヴァン・マッコイが参加してます。この3人の作品は何曲かありますが、そのなかの1曲。
 残酷なラットレース ルールは一つだけ このジャングルの中でお前は9時から5時まで戦わないといけない この鉄とコンクリートのジャングルで生き続けるために 飢えたくないならお前は豚のようにならないといけない 友情などというものはない ここでは犬が犬を食う 食べて寝て 寝て食べて おお神よ なんという轍 仕事と奴隷 奴隷と仕事 こんなものに価値なんてないと感じる でも女房と子供の姿を見ていると 自分に言い聞かせる オレはあきらめない このラットレースでオレは必ず勝つんだ
そういうリーバー&ストーラーぽい1曲です。

RAT RACE / THE DRIFTERS

 

「RAT RACE」はほかにも何曲かあります。
有名なところではボブ・マーリーがあります。
これも割と有名です。インテリぺリ。
速弾きギターの代表格です。クリス・インペリテリのバンド。
1996年のアルバム『SCREAMING SYMPHONY』
もう速弾きの鬼です。でもルーツはディープ・パープルだとこの人は言ってます。そういう空気があります。
ディープ・パープルにもそういうネズミの曲がありましたね。「フライング・ラット」だっけ?、忘れちゃった。『イン・ロック』。あとで調べます。すいません。
で96年のアルバム『SCREAMING SYMPHONY』から、そのままずばり「RAT RACE」
 生存競争につかまって 悪魔のゲームをプレイして 追い越し車線の車のような生活をし 炎を燃やしている 今こそ変えるときだ オレの人生を
問題意識にあふれた1曲です。

日本盤の解説はもちろん伊藤政則さん。
実をいうと2017年1月15日、酉年で「酉で棚からひとつかみ」のときに同じアルバムに入っている「17TH CENTURY CHIKEN PICKIN'」をかけました。
嫌いじゃないです。いいアルバムです。これ。
うまいんですね、この人。フィンガリングの正確さはすごいですね。
さっきのディープ・パープルのは「Flight of the Rat」
ディープ・パープルの進化型という感じがします。
なんか番組が違う(笑)

RAT RACE / IMPELLITTERI

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ヘビーなのが2つ続きましたので柔らかいやつ。
「MUSKRAT LOVE」という曲があります。
もともとはウイリス・アレン・ラムジーが『MUSKRAT CANDLELIGHT』という72年に出した自分のソロアルバムで出したやつをアメリカがカバーしまして、1973年に全米67位。
これをキャプテン&テニールのテニールが車の中で聞きまして、これをやってみようと。セカンドアルバムの「Song of Joy」に入れまして、シングルカットしたところ大ヒットしまして、76年に全米4位のミリオンセラーになりました。
MUSKRATは日本ではジャコウネズミという訳がありますが、調べたら最近は違うとものの本に書いてありますけど、いいんです別に。曲自体は言葉遊びみたいな曲なので。
「MUSKRAT LOVE」、ジャコウネズミの恋と訳すんでしょうか。
3つバージョンがありますが、これが日曜日の午後にはいちばんいいと思いまして。

MUSKRAT LOVE / CAPTAIN & TENNILLE

 

ミッキーマウスはたくさんいろんな人がやってますが、その中でも俊逸なひとつ。
ジュリー・ロンドンの1967年、ジミー・スミスと同じですね、67年のアルバム『NICE GIRLS DON'T STAY FOR BREAKFAST』の最後に入ってます。ジュリー・ロンドンならではの「MICKEY MOUSE MARCH」

MICKEY MOUSE MARCH / JULIE LONDON

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リスナーより『単刀直入にお聞きします。昨年の紅白「AI美空ひばり」を、どう思われますか。
私としては、技術としてはありかもしれませんが、歌番組の出演、CDの発売はぜったい否と考えます。
AI大瀧詠一、AI山下達郎なんて、聴きたくありません』
ごもっともでございます。
一言で申し上げると冒涜です。


日本モノはなかなかいいものがなかったんですが、これをいってみようかと。サンハウス。めんたいロックの始祖です。
サンハウスの1976年のセカンド・アルバムだと思います。2012年に出たリマスターものなんですけど、何もないんです。歌詞カードが入ってるだけ。ディスコグラフィーくらい書いてくださいよ。テイチクさん。
サンハウスの1976年のアルバム『仁輪加』から、鮎川誠さんの最高のギター・プレイ「どぶねずみ」。

どぶねずみ / サンハウス

やはりネズミというと、どちらかというとネガティブなイメージで底辺的な、そういうものが多いです。


今度は変なやつ。
ニック・ロウが1976年に出したEPに入ってます。インスト曲ですけど、なかなかいいんです。変なベースのフレーズが耳から離れない。
ニック・ロウ、1976年のEP『BOWI』から「SHAKE THAT RAT」

SHAKE THAT RAT / NICK LOWE




最後はですね、チェット・アトキンスのインストにしようか、マイケル・ジャクソンの「BEN」にしようかと迷っていましたけど、超常連の方から「BEN」にリクエストが来ましたので、これでいってみたいと思います。
ベタですけども1972年にマイケル・ジャクソンが主題歌を歌いまして。
ベンというねずみと少年の友情の物語。こわいけど、ほのぼのするという。
全米ナンバー1のマイケル・ジャクソンの代表作の1曲でございます。

BEN / MICHAEL JACKSON



<この項おわり>