おとのほそみち

行きかふ歌も又旅人也



山下達郎サンデーソングブック 2019年2月10日「ROCK! ROCK!と66で棚からひとつかみ」

 

オンエアされた各曲に関する達郎氏のコメントの趣旨を書き起こし、YouTubeに音源がある場合は貼っておきますが、オンエアされたものとは別音源の場合があります。

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今週は恐怖の聴取率週間です。
私、66歳になりましたので、じゃあロックでどうか、という安直な思いつきです。
66でロック・ロックなので、今日は、山下達郎66歳記念でございます。

ヒット曲は、ほとんどありません。
だいたい、めちゃくちゃ古いです。私が生まれたころの曲ばっかり。
そういうようなものを集めまして、ちょっとひねったロック・ロック。

要するにロックを連呼する曲でまとめてみました。
というわけで、今日はぜんぜん聴取率週間に何の貢献もできません。
JFNのネットワークのみなさま、すいません。

 

今週は、バレンタインデーでございます。大瀧詠一さんの「Blue Valentaine's Day」
1. BLUE VALENTINE'S DAY / 大瀧詠一

 

2. ROCK, ROCK, ROCK / JIMMY CAVALLO & HOUSE ROCKERS

ロックという言葉でどういう音楽を連想するかというのは、世代によって違いますけども、もともとは1950年代に、いわゆる白人系の南部のヒルビリーとか、そういうカントリー系の音楽とそれからブルース、黒人系の音楽が合体して生まれました。
その前は、当然ジャズだったんですけども、ジャズもロックンロールも最初はダンスミュージックでして、躍らせるための音楽ですね。ですのでビートが強い。
ロックという音楽はロックンロールといわれてましたけど、ロックンロールという言葉は造語です。
ロックンロールという言葉を作ったのはAlan Freedという有名なDJがおりまして、この人が白人の子供たちに、そうしたブルースとかですね、リズム&ブルース....
リズム&ブルースという言葉もその後に作られるんですが、そうした音楽を白人の子供たちに聴かせたいという欲望からですね。
それまでレイスミュージックとか、わりと差別的な用語で、ハーレム・ミュージックとかですね、そう言われてきたものをロックンロールと名付けました。
これが全米に広まって、ロックの時代が始まるわけです。
今の若い方々のロックというイメージの音楽とはずいぶん違いますけども、これがルーツです。1950年代の音楽ですが。

そのAlan Freedが製作に係りました、その名もズバリ「ロック・ロック・ロック」という映画があります。当時のスターがたくさん出てる映画です。
そのテーマソングを歌っておりますのが、今お聴きをいただきましたJimmy Cavalloというニューヨーク生まれの白人のバンドのリーダーです。
56年の作品ですけども「ロック・ロック・ロック」という映画も56年です。
これのテーマソングとして出ました。
全員白人のグループなんですけども、ニューヨークのアポロシアター.....ハーレムのですね、黒人のリズム&ブルースの殿堂ですが、ここに出た最初の全員白人編成のバンドということです。
従いまして、ブルー・アイド・ソウルという白人のリズム&ブルースの原点というような感じもします。ドラムの勢いはいま聞いてもすごいものがあります。

 


先週Four Freshmenの「ROUTE 66」をお聞きいただきましたが それはもともとBobby Troupと言うソングライターの名曲です。ロックンロールでもたくさんカバーがあります。Rolling Stonesとか色々ありますが、何と言ってもコレでしょう Van Morrison率いるThemのファーストアルバムに入っています。1965年のレコーディング。バックメンバーは 出たり入ったりを繰り返したバンドですけれども。

3. ROUTE 66 / THEM

 


冒頭にも申し上げましたように、ロックという言葉のイメージというのは世代ごとにかなり変わっておりますが、今日、お聴きをいただいているようなものが一番最初の世代でして、その前はジャズになります。
もともとアメリカの音楽は、ダンスミュージックとして発展したものがほとんどです。
戦前の30年代、40年代。Benny Goodman、Tommy Dorsey、Glenn Miller、みんないわゆるダンスミュージックを作ってたんです。
レコードというものが生まれ、それの発展とともにですね、聴くための音楽としての要素が出てきました。リスニング・ミュージックです。
それで大きなムーブメントになりまして、商業的にも成功するわけです。
そのあとにミュージシャンの要するに自我が出てきます。
自分のアイデンティティを演奏で表現したいというところで、ビバップとかモダンジャズという個人的な音楽のスタイルになった結果、ダンスミュージックとしてのコマーシャルなものがどんどん減っていきます。
踊れなくなって、音楽的にも高度なものになって難解になってきます。一般的に商業的なコマーシャリズムとだんだんかけ離れていきます。

その代わりとして出てきましたのが、たとえばジャンプ・ブルースとかブギウギとか、ダンスミュージック。そこからロックンロールにつながっていきます。
そういう時代のいわゆるブギウギ、リズム&ブルースといわれるロックンロール世代の一番アタマで非常に影響力がありましたのがAmos Milburn。
1953年といいますから私の生まれた年のレコーディングです(笑)
これもずばり「ロックロックロック」。Amos Milburnのヒット曲で「Chicken Shack Boogie」というのがあります。そこから取ったバンド名だと思われます。

4. ROCK, ROCK, ROCK / AMOS MILBURN & HIS ALADDIN CHICKENSHACKERS

 

今日のプログラムはロックロックでずっと行こうと思ったんですけども、あまりに景気がよくて疲れるので66と交代でやります。根拠はありません。棚つかですから。

次はブリティッシュロック、The troggs。1966年のシングルのB面として発売されました。結構人気がある曲です。
これは電話番号の歌でして「君が僕を必要とするならこの電話番号にかけてくれ  そこに僕はいるよ 君が欲しいものを僕はよく知っているんだ」というtroggsらしいメタファーに満ちた歌です 。
3ピースバンドでそのうちのボーカルが一人。ギターがすごく綺麗で好きなギターの音です。「Wild Thing」「With a Girl Like You」など、たくさんヒット曲があります。
5. 66-5-4-3-2-1 / THE TROGGS

 

 
お次はドゥーワップです。歌っているのはRichard Berry。「Louie Louie」のオリジネーターです。ルイジアナ出身でドゥーワップグループをたくさん作ってきました。Debonaires、Flairs、そして今日お聞きいただきますPharaohs。「Louie Louie」を出した次のシングルで「Rock,Rock,Rock」と言う1957年のシングルです。

6. ROCK, ROCK, ROCK / RICHARD BERRY & THE PHARAOHS

ルイジアナ出身と言いましたけれどもウエストコーストドゥーワップの人で、ウエストコーストで非常に重要な位置を占めた人です。大瀧詠一さん好みの曲で、きっと喜んだと思います。



次はちょっと優しいやつ。66と言いますと先週もお聞きいただきましたSergio Méndez & Brasil'66。これで一休みしていただきましょう。1966年、全米71位。意外とアメリカではチャートが良くないんだと今回調べてみて分かりました。日本では本当に人気がありました。Lani Hallと言うシンガーもいい声をしていました。セカンドアルバムからのシングルカットです。
7. CONSTANT RAIN / SERGIO MENDES & BRASIL '66


 

ロックロックと連呼してるやつを探しますと、ほとんど1950年代に戻ります。ロック という言葉は今よりもその頃の方が新鮮だったと言えます。ロック、ロック、ロックと言うそれで歌が作れてしまう。今だったらそれではね(笑)
今度はロカビリー系のサウンドを持ってきました。何しろロックロックロックと66をデータで探し回って100曲ぐらい調べまして、その中から全くバイオはわからないのですがいい曲だったので持ってきました。
Fendersというぐらいなのでフェンダーのギターの良い音がしてます。典型的なロカビリーサウンドです。
1959年のレコーディングで、兄弟を含めた4人組の編成だと資料には書いてあります。
Elvis Presleyから始まってCarl Perkins、Jerry Lewis、そうした南部の歌い方で、いい声をしています。まあ20歳前後でしょうね。

8. ROCK,BABY,ROCK / BOB HICKS & THE FENDERS

一番最初にお聞きいただきましたJimmy Cavalloは、どちらかといえばR&Bの系統ですが。ロックンロールと言うと出てくるのがBill Haley And His Cometsですが、彼はどちらかというと、こうしたロカビリー系のサウンドです。微妙な違いですけれども。

 

 

次はいきなり70年代に飛びましてLyn Collins。
この人はJames Brownファミリーの人です。テキサス出身で1969年からJames Brownのデビューに参加しましてかなりの人気を博しました。初来日の時にJames BrownがLyn Collinsを連れてきまして一緒に歌っていました。
これはLyn Collinsの74年のシングル、全米ソウルチャート53位。何でこれかと言いますとロックロックじゃないんです。Rock Me Again and again and again and again and Again and Again 6Times」という曲です。連呼に変わりはないというこじつけですこじつけ(笑)

9. ROCK ME AGAIN & AGAIN & AGAIN & AGAIN & AGAIN & AGAIN / LYN COLLINS

 


次はカントリー系です。いわゆるカントリーロックと言うかオルタナカントリーの範疇に入りますかね。1987年の作品ですが、歌っているのがSteve Earleと言うテキサスのギタリスト。Steve Earle & The Dukesという名義で1987年に発売された「Exit 0」というアルバムの中に入っています。
Sweet little 66、この場合の66は66年型のシボレーのことです。「ちっちゃなシボレーを手に入れた こいつは黄色いフロントフェンダーとバックがグレーなんだけど 所得税の還付金が返ってきたら黒く塗ってやるんだ」とそういう歌です。
1980年代に結構カントリーを買ったことがあって、こんなものまで持っている自分が怖い(笑)何が役に立つかわかりません。
10. SWEET LITTLE '66 / STEVE EARLE

 

 

最後はリクエストにお応えして。

11. MAGIC TOUCH / 山下達郎

 


来年は67ですけど、それはできません。
69になると、なんか怖いものがあります。

 

#この項おわり