ジャクソン・シスターズは、ジャクソン5とは血縁的な関係は何もない。
だが、全く関係ないというわけでもない。
ジャクソン5の初代プロデューサーで、彼らをスターに育て上げたとされるボビー・テイラー(Bobby Taylor)。
このボビー・テイラーが、ウエストコーストで見出し、プロデュースを手掛けたのがジャクソン・シスターズなのである。
姉妹の5人組ヴォーカル・グループで、デビュー前からスモーキー・ロビンソン&ザ・ミラクルズ(Smokey Robinson and the Miracles)の前座を務めるなど、有望株であったらしい。
1973年にレコード会社と契約を結び、「I Believe in Miracles」をリリース。
リードヴォーカルは一番年下のジェニーで、たしかにパンチ力と躍動感のある歌だ。
ただ、のちに再評価されるものの、リリース当時は評判になったとは言い難く、全米ソウル・チャートで89位どまりだった。
この曲が収められたセルフタイトルアルバム「THE JACKSON SISTERS」がリリースされたのは、1976年。
ほとんど市場には出回らなかったらしく、再評価された際には、中古盤屋などで、非常に高い値段がついていたらしい。
基本的には、ベースラインが印象的なワングルーブの曲で、非常にノリがよくメロディもキャッチーで、何でヒットしなかったのか、いささか不思議ではある。
70年代前半は、こうしたテイストの名曲が目白押しだったから、そのなかに埋もれてしまったのかもしれない。
のちにイギリスのレアグルーヴシーンの中で、クラブDJたちが着目し、こぞってかけるようになった。
いまではアルバムもCD化されていて、手に入る(はずだ)。
ハマ・オカモトさんが、ラジオ番組でこの曲を解説しながら、
「この曲のイントロ、モーニング娘。の“LOVEマシーン ”のイントロの元ネタでは?」
と言っていたけれど、なるほどである。
ジャクソン・シスターズは「I Believe in Miracles」のあと3枚のシングルをリリースするが、どれもヒットには至らず、活動を終える。
話は続く。
この曲を書いたのは、プロデューサーのボビー・テイラーと、マーク・キャパニ(Mark Capanni)という人なのだが、このマークのヴァージョンというのがある(後年に発掘された)。
ネットでの情報によれば、ジャクソン・シスターズのヴァージョンの約1年前に完成し、プレスまでされていたそうだが、“迫力が足りない”などの理由でリリースは見送られたそうだ。
これら経緯の真偽は定かではないが、いまではこの音源もネットで聞くことができ、ジャクソン・シスターズヴァージョンよりも、よく言えばソフィスティケートされており、悪く言えばたしかにパンチがない。
まさかこの曲が、のちにレアグルーヴの名曲と讃えられるようになるとは、彼は思いもしなかっただろう。
<了>