おとのほそみち

行きかふ歌も又旅人也



ウィリー・ネルソンの「帰り来ぬ青春」が沁みる

 

先日このブログで

「ご高齢でありながらも、ばりばりと活躍されている方を見るとうれしく、元気をもらえる気分になる。」
として
ベテラントランぺッターであるハーブ・アルパートの作品を紹介した。

リリース時の年齢は84歳である。


今日はシンガーを紹介したい。

御年87歳のウィリー・ネルソン(Willie Nelson)が新作アルバム『First Rose Of Spring』をリリースした。

なんと70枚目のアルバムだそうだ。

本来ならば2020年4月、87歳の誕生日に合わせてのリリース予定だったが、コロナウイルス感染拡大の影響で延びていた。

ようやく7月3日にCDリリースされ、喜ばしい。(日本盤は7月22日)

 

その内容はというと、自作曲に加えて、ウィリーが敬愛するポップス、カントリーの名曲をカバーしている。

ラストは、そのカバーの1曲で「Yesterday When I Was Young(帰り来ぬ青春)」である。

これがもう、実にいい。

 過ぎた昔よ 空は青く 風は光り
 風のように戯れていた 鳥のように空を飛んだ
 誓い合った愛の言葉 砂の上のもろい城に
 積み重ねた輝く夢 今は消えて時は流れ
             (訳詞:吉原幸子さん)

 

87歳の大ベテランが、訥々と自らに語りかけるかのように、これを歌うのだ。

沁みないわけがない。

もともとはフランスの国民的シャンソン歌手シャルル・アズナヴールが作詞・作曲した「Hier Encore」がオリジナルで、これはもちろんフランス語。リリースは1964年である。

1969年にアメリカでカントリーシンガーのロイ・クラークが英語詞でカバーし、全米で19位のヒットを記録。

その後、ビング・クロスビー、シャーリー・バッシー、ダスティ・スプリングフィールドらが素晴らしいカバーを残している。

日本で有名なのは、尾崎紀世彦さんのカバーで、上記の訳詞は尾崎さんが歌ったもの。

あと和田アキ子さんのカバーも知られている。

当然のごとく、際立った歌唱力を持つ人ばかりだ。


その名曲を、ウィリー・ネルソンがカバーした。

大トリというか真打ちというか、ぶっちゃけ、ウィリーにやられたら次にやる人はトニー・ベネットくらいしかいないのではと思うが、やはりしみじみと素晴らしい。

この曲に限らず、『First Rose Of Spring』にはコクのあるバラードがそろっていて、地味ではあるけれど、これは名盤。

重ねた歳のぶんだけ味わい深い、などというと感想として月並みすぎるが、若いシンガーにこの味が出せないことは確かだろう。

 

 

ファースト・ローズ・オブ・スプリング

ファースト・ローズ・オブ・スプリング

01. First Rose of Spring
02. Blue Star
03. I'll Break Out Again Tonight
04. Don't Let the Old Man In
05. Just Bummin' Around
06. Our Song
07. We Are the Cowboys
08. Stealing Home
09. I'm the Only Hell My Mama Ever Raised
10. Love Just Laughed
11. Yesterday When I Was Young (Hier Encore)

 

<了>