高岡早紀は、80年代の終わりからの数年間に4枚のアルバムを出している。
強引にひとまとめで語ると、ちょっとフレンチテイストのあるコケティッシュなポップスで、爆発的にヒットしたわけではないが、評価は高かった。
それから20数年を経て2014年にリリースされた『SINGS –Bedtime Stories-』は、ガチのジャズボーカルアルバムだ。
選曲は「夜寝る前に静かに聴きたいアルバム」というコンセプトのもと行われ、「星影の小径」「黄昏のビギン」「アゲイン」などのスタンダードナンバーが並んでいる。
注目すべきは、日本を代表するジャズピアニスト山下洋輔の参加だ。
どうやら彼は後見人的な立場でもあるらしい。
リリース元であるビクターのサイトに、彼のコメントがある。
「高岡早紀の体にはジャズが染みついている。父親は、横浜馬車道の老舗ジャズ・ライブ・スポット「エアジン」を創設した高岡寛治だ。親友だったので、彼の早逝後、子供達の「おじさん役」を任じて来た。そして、彼女が芸能界にデビューした頃から「ジャズを歌う時はヨースケ・オジチャンが伴奏するからね」と吹き込んでおいたのだ。とうとうそれが実現して、とても嬉しい。」
なるほど。そりゃうれしいだろう。
とびきりテクニカルというわけではないが、母性的な優しさ、幼女のような屈託のなさ、遊女のような妖しさを醸し出すその歌声には、やはり女優としてのキャリアが息づいているように思える。
ボサノヴァ集もリリースしている。こちらもなかなか。
原田知世が2015年にリリースした『恋愛小説』は全編ジャズではない。ラヴソングをテーマにしたカヴァー・アルバム。ジャンルを選ばず選曲する中で、半数近くがジャズ・ナンバーになったということだ。
それまで女優と歌手ははっきり分けていた彼女だが、このアルバムでは演じるように歌うことにチャレンジしたように聴こえる。
ジャズ雑誌にも登場した。
#この項おわり